お知らせ

【北川フラム】奥能登美術考⑨ 10月7日

レポート 2017.10.11
【北川フラム】奥能登美術考⑨ 10月7日

芸術祭も残り20日を切りました。
この文章を珠洲の旧消防署2階の事務所で書いています。地元の人たちも他所から来られた方も結構芸術祭を楽しんで下さっています。例えば若山地区、ここの上黒丸小中学校には金沢美大がかかわっていて、中瀬康志さんが、まさに美術なるものと地域を丸ごとご自分の身体を媒介にしてつないでくれているところです。
IMG_0636.jpg
学校が舞台になるようにトランポリンのようなステージを作ったり、キャンプ場になるように木の梯子のようなもので校庭を埋めたり奮闘しています。体育館では教え子が着物をバトンのように吊るしている。
IMG_0632.jpg
彼は3年前から北海道から坂巻正美さんを呼んで来ています。坂巻さんは小さな旧北山分校に鯨の頭骨を祀り、海のない地域で鯨を媒介にして行われていた海と山の交流をテーマに「鯨談義」の場を作っています。
IMG_0682.jpg
休耕田には大きな櫓を組んで大漁旗を掲げていますが、これは穴水町で今も行われているボラ待ち櫓がモデルになっていて壮観です。
1005-5.png
また南山では九州の人類学者竹川大介さんが五右衛門風呂を作ったり、十個ぐらいの竹ドームを据えていて、拠点では毎週、これでもかと言うほど、セミナー、音楽、ダンスなどをやっている。これはこの地を拓いていった先祖のあとを辿っているようなものです。珠洲の人たちもここへは初めて来たといって喜んでおられる、何か不思議な場所になっています。「これが美術か?」と言われれば僕も「そうだよなぁ」と言ってしまうしかないプロジェクトだけれどとても好きなんです。こういうのが。
IMG_0616.jpg
塩田千春さんの砂取船を囲んだ真紅の空間、2万個のサザエを貼りつけた村尾かずこさんの漁師小屋、初めは反対した地元民が今は祈りを捧げるようになった深澤孝史さんの漂着神社、半島の突端を歩きながらヤブツバキの群生のなかで見る木漏れ日・・・・・あれもこれも、珠洲の旅は私達の日常の均質感に刺激を与えてくれて楽しいのです。
0905_naka_06.jpg
もちろん僕は現代美術どまん中、現代美術の先端に出会ったり、体験するのが好きです。いわば絶対的な空間での物理的、化学的実験のなかで知っていく宇宙誕生、極少が無限の膨張に変換する秘密に興味は尽きません。でもこれらと同じように、縄文の謎、プルシアンブルーのなか谺(コダマ)する鯨の叫び声、宝湯四代の「カラマーゾフの兄弟」的家族史も好きなのです。僕が考える美術とは、この一瞬、そしてここに続いてきた生命のつながりの中で起きていくドラマを巡るものであっていいと思える活動のことなのです。木口木版の秘術も、世の中のあらゆる人・物が乱入する映像も、科学実験のようなミニマル・アートも、それらが時空を超えて表われていく祭があって欲しいのです。
この一月から瀬戸芸の実行委員会が主催するフラム塾が始まり、大地の芸術祭の準備に入ります。

とんでもない選挙が10月22日にぶつけられ、21日22日の珠洲は大変です。サポーターの皆さん、21日22日、珠洲に結集してください。

このページをシェアする