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【北川フラム】奥能登美術考⑦ 9月30日

レポート 2017.10.01
【北川フラム】奥能登美術考⑦ 9月30日

珍しくツアーがない土曜日なので、三崎地区でやっているOngoing Collectiveの映画2作品を観ました。それぞれ30分程度。素晴らしい。ビックリしました。
和田昌宏の「さまよう魂、漂う風景」。

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海の向こうから漂流してきた男性をこの地の青年が家に連れてきて世話するというストーリーです。この間相手の男性は一言も話さない。性交、殺害のあとに一言、聞き取りにくい外国語を話すだけだが、イメージの鮮烈さと、丁寧な動作の積み重ねが説得力があって、それは冷たく濃緑色の海がもつ隔てとつながりをもつ深い河を表しているようだ。秀逸な作品でした。

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もうひとつ山本篤の「卒業 奥能登春夏秋冬」は三崎小学校の不思議な卒業式の不思議な答辞にこの地域のあれやこれやが時代をかぶって映しこまれていくというもので、出演者も地域のいろいろな人が出てくるのでつじつまがあっていないのですが、それもまた良いのです。この地域の揚げ浜式塩田作業で唄われる「砂取節」が全体の話に厚さを与えているし、葸めた(あつめた)映像もよく吟味してあります。珠洲のオリエンテーションとしても絶好のものでした。とにかく面白いのです。

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私は率直に反省しました。今までの芸術祭で、ちゃんと見ていなかったのがあるのではないか。こんなに地域をしっかりと見ている映像作家がいるのだ。皆さん、この旧小泊保育所の奥能登口伝資料館に2時間とってください。こんな作品があれば、もともと熱心な地元の人々も嬉しいだろうなあと思えました。売店のあごの出汁も梅干も買っていって下さい。

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そう言えばこの間、リュウ・ジャンファの作品の横でNoto Aburi Projectの人達が炙りの準備をしていました。うまく出会えば楽しいだろうなぁ。

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地域四ヶ所にロシアのコンスタンチーノフのバス停をアルミニウムの家で覆った作品があります。(笹波口深澤孝史そば、珠洲八幡神社そば、正院川尻、正院恵比寿湯そば)

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彼は珠洲を廻ってみて、どこのバス停もしっかり屋根付の小屋になっていることに驚いたそうです。バスを待つ人へのホスピタリティでしょう。それぞれの場所が海の彼方の異邦につながる開口部をもつように材料交渉から、制作まで自力で作り上げました。彼は美術家だと言いますが、本業は大学で教えていた数学者です。旧社会主義国のアーチストに共通するのは芸術のベースをおさえた自力で制作する巨匠といわれるタイプの方が多いことでした。

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文:北川フラム

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