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【北川フラム】奥能登美術考⑥ ―ツアーの途次

レポート 2017.09.30
【北川フラム】奥能登美術考⑥ ―ツアーの途次

 日置地区では、木の浦ビレッジや狼煙の道の駅が協同組合的な地元住民の出資で運営していて地域づくりの参考になり、それぞれ澤信俊さん、新弘之さんが居られることもあり私の好きな場所です。つばき茶屋もあるなぁ。見晴らしも良く、番匠さつきさんと話していると楽しい。映画「さいはてにて」のロケ地で使われていた、海に突き出した小屋でのよしだぎょうこ+KINOURA MEETINGの茶会にはまだ参加できていませんが、その奥にあるアローラ&カルサディージャの「船首方位と行路」は、船が風でやじろべえのように動いて、半島にある岩場の感じによく合っています。よく見ると「有耶無耶合意丸」と記してあって、1898年米西戦争時の植民地的やり方に対する作家の気持ちも分かるというものです。

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 EAT & ART TAROさんの「さいはての『キャバレー準備中』」は、軽い昼食、夕食もとれる喫茶としても人気があり、ここの建築的(インテリア)な部分は藤村龍至さんに面倒を見てもらいました。キャバレーの本番は、前夜祭と「キモノママナイト」と、瀬戸内からの皆さんが仕切って「瀬戸芸ナイト」が行われただけですが、今後は10月7日の「スズママナイトwithさいはてボーイズ」と、10月21日の「ラスボスナイト」があります。今までは一瞬で席は完売です。何でこういう怪しげな施設をつくり、怪しげな命名をしたかですが、この華やかでありながら何か哀愁のある場を、今後日本一の貸ホールとして名所にしたいという思惑があるからです。親の金婚式に!友達の送別会に!「さいはてのキャバレーを使おう」というのは実にオシャレではないですか。

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 この隣に長谷川逸子さん設計による文化施設ラポルトすずがあり、芸術祭のインフォメーションセンターになっています。ここには三人組でその名から1文字ずつとって命名された"力五山"の「潮流―ガチャポン交換器―」があります。

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 飯田から上戸へ向かい、横道をちょっと入った海沿いの漁師小屋に、真壁陸二の「青い舟小屋」があって、外光が差し込むなか板絵がほのかに、しかし鮮やかに輝いていて、海が室内に入ってくる楽しさがありました。

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 最後に珠洲のシンボルになっている見附島の海岸に打ち揚げられているように見えるリュウジャンファの作品について記します。

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 ここに打ち揚げられているのは、中国の焼物の聖地・景徳鎮の陶器と、珠洲焼の壊れ物です。このふたつが、遣隋使、遣唐使、渤海使が流れ着いて以来、大陸との公的あるいは私的な文物・人間の交流の象徴として波打ち際に混淆して堆積しているさまは、さまざまな感慨を私たちに呼び起こさせてくれます。まさに一衣帯水の東アジアの交流圏、文化圏のありかが分かるというものです。

文:総合ディレクター北川フラム
写真:中乃波木

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